航空分野と宇宙分野の両方がそろう国内唯一の本格的な博物館が岐阜県各務原市(かかみがはらし)に誕生!(2018年3月24日・土曜オープン)
もともとあった「かかみがはら航空宇宙科学博物館」を大幅にリニューアルし、敷地面積も拡大。「岐阜県」が運営に加わったことにより施設の名前が新たに「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」となりました。
ちなみに2017年11月にオープンした「あいち航空ミュージアム」が三菱重工系の施設であるのに対し、「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」は川崎重工系の施設になります。そこらへんも意識しながら見学するとよいでしょう。
入館料・開館時間・休館日
入館料
高校生と60歳以上…500円(団体400円)
中学生以下…無料!
※団体料金は有料入館者(=高校生以上)が20名以上の場合に適用(公式サイトから事前の予約申込みが必要、ただし2018年3月24日~3月31日は混雑が予想されるため団体申込みは受付しないとのこと)
※障がい者と同行者1名は半額(手帳の提示が必要)
※保育園や幼稚園、各種学校の児童生徒を引率する教職員は無料
年間パスポート
高校生と60歳以上…1300円
開館時間
土日祝…10:00~18:00(最終入館受付17:30まで)
平日…9:30~17:30
土日祝…9:30~18:30
ペットの入場は禁止
博物館・芝生広場・屋外展示場へはペットを連れての入場ができません(介助犬を除く)。
休館日
※つまり4月と5月と8月は休館日ナシです
オープン初日
年配者が多め
2018年3月24日(土曜)、開館を待つ人たちの行列です。春休み中ということもあってか子供たちの姿もありましたが、年配の方が意外に多くてビックリ。
オープニングセレモニー
来賓や自治体関係者、川崎重工の関係者などが列席する中で行われたオープニングセレモニー。
水ロケット発射!
セレモニーのシメは水ロケットの発射。水ロケットというのは水と空気が入ったペットボトルに、自転車の空気入れのようなもので圧力をかけて飛ばすものです。
発射5秒前!
4…3…2…1…
1分28秒ほどの動画にまとめました
オープニングセレモニーが終わり、いよいよ一般入場開始です。展示物を順番に見ていきましょう。
無料の「屋外展示エリア」
博物館の正面ゲートをくぐると、まず現れるのが実機を屋外に展示しているエリア。ここは営業時間内であれば誰でも自由に無料で見学できます。
YS-11
YS-11A-500R 中型輸送機
戦後初の国産旅客機として知られる「YS-11」。「ワイエスジュウイチ」と呼ぶ人も多いかと思いますが、実は「ワイエスイチイチ」が正解です(Y=輸送機、S=設計、最初の1=胴体設計の第1案、次の1=エンジン設計の第1案)。
YS-11の主翼とエンジンナセル(エンジンを覆うカバー)は、ここ各務原市の川崎重工で製造されました。
初飛行が行われた1962年(昭和37年)以降、1973年(昭和48年)までに182機が製造されたYS-11。ここに展示されているのは、そのうちの1機。ANK(=エアーニッポン株式会社)で1995年(平成7年)まで現役だった機体です。
かつてはYS-11の機内に入り、座席に座ることもできたのですが、今回は内部が非公開でした。今後、機内が公開されることがあるのかどうかについては運営側からのアナウンスがないので分かりません。
そのほかの機体
1962年(昭和37年)から26年間にわたり、ここ各務原市の川崎重工で159機が製造された多用途ヘリコプター。展示されているのは陸上自衛隊で「救援機」として使用されていた機体です。
さらに、水陸両用の救難飛行艇や
水中の潜水艦を攻撃する能力を備えた哨戒機(=パトロール機)などが屋外展示されています。
「科学」成分のなごり
屋外展示広場の脇に置かれているパラボラアンテナ。
「向かい合って設置されたパラボラアンテナでおはなししてみよう」
15m離れた距離でも驚くほどクリアに声が聞こえてしまうという科学実験コーナーです。かつてこの施設が「かかみがはら航空宇宙科学博物館」だった時代の「科学」成分のなごりです。ぜひお試しあれ。
屋外展示エリアを抜けると、いよいよ博物館の本丸へ。ここから先は有料です。
1階「航空エリア」
航空機産業の始まり
ライトフライヤー(実寸模型)
1903年(明治36年)にアメリカのライト兄弟が飛行に成功した人類初の動力飛行機「ライトフライヤー」の実寸大模型を展示。航空機産業の歴史の始まりです。長い歴史の中で、人類が空を高速で飛べるようになったのは、ほんの100年ちょい前のことなんですねえ。
陸軍・乙式一型偵察機(実寸模型)
川崎造船所(現在の川崎重工)がフランスのサルムソン社から製造権を取得して国産化、ここ各務原の地で初めて量産された記念すべき飛行機です。初飛行は各務原飛行場で1922年(大正11年)に行われ、その後1927年(昭和2年)までに300機が製造されたそうです。
戦前・戦中の航空機開発
陸軍三式戦闘機二型「飛燕」(川崎キ61-Ⅱ改)
第2次世界大戦時に各務原の川崎航空機(現在の川崎重工)が開発した三式戦闘機「飛燕(ひえん)」。1941年(昭和16年)に各務原飛行場で初飛行したあと、1945年(昭和20年)までに3000機が製造されました。
国内に唯一現存している実機を全力で修復。再塗装せず、ジュラルミンむき出しの状態で展示しています。
「飛燕」の主任設計者は、のちに国産旅客機YS-11の設計にも携わった土井武夫(どいたけお)氏。スピードと旋回性能の両立を目指し、当時の主流だった空冷式ではなく、液冷式のエンジンを採用しています。
木製の使い捨て燃料タンク
燃料を使い切ったら、身軽になるために切り離して投下するんだそうです。
海軍十二試艦上戦闘機(零戦の試作機・三菱A6M1)
試作機の初飛行が「陸軍・各務原飛行場」だったことなど岐阜ケンミンでも意外と知らない歴史を持っている「ゼロ戦」。展示されているのは試作1号機の実寸大模型です。
ほかに、エンジン本体や部品、当時の飛行士の服装や装備品、戦時中の世相が忍ばれる品々等、丁寧に展示されています。
写真で紹介したものは、このエリアの展示物のごく一部。とても見ごたえがありました。
戦後の航空機開発
屋内展示の広大なエリアにはSTOL(エストール)実験機「飛鳥」を始め、じつに20機以上の航空機がズラリ。戦後日本の航空機開発の歴史がわかります。ちなみに「STOL(エストール)」は短距離離着陸のことで、短い滑走路でも離陸・着陸できる飛行機です。
これほどたくさんの実機を展示している博物館は日本でここだけ。
三菱T-2(超音速ジェット戦闘機)
三菱重工が製造を担当し、1971年(昭和46年)に初飛行した航空機です。展示されているのはブルーインパルス塗装の機体。
川崎KH-4型ヘリコプター
「KH」は川崎ヘリコプターの略。マスコミの取材や海上保安庁の救難活動などさまざまな場面で活躍した名機です。総生産数は203機。
ここ各務原市が現在も日本のヘリコプター生産の中心地となっていることを解説しているプレート。この博物館から北に2㎞のところにある「川崎重工・岐阜工場」で作られています。
富士重工・T-3練習機
定員2名の初等練習機。かつて航空自衛隊のパイロットが、まず最初に乗っていた練習機(訓練機)です。30年近くパイロットの育成に活用されたあと、2007年(平成19年)にその役目を終えました。コクピットを間近に見学することができます。
シミュレーター
航空機のしくみを解説しているコーナーに置かれているのは「小型ジェットシミュレーター×3機」「旅客機シミュレーター×1機」「ヘリコプターシミュレーター×1機」。飛行機が空を飛ぶメカニズム(揚力・推進力)や飛行機を操縦する仕組みを体験し、学ぶことができます。
混雑時は、あらかじめ整理券をもらっておくと良いでしょう。受付カウンターで係の人に相談すれば、やさしく対応してくれます。
空から宇宙へ
飛行機が発明されてから半世紀、早くも人類は宇宙開発に乗り出します。
H-Ⅱロケットの先端部分(フェアリング)
デカっ。思わず声が出てしまいます。ここから先は2階に上がり、宇宙分野の展示エリアに突入。
2階「宇宙エリア」
宇宙への出発
ペンシルロケットの実寸大模型を始め、現在開発中のH3ロケットなど国産ロケットのスペックや歴史が紹介されています。
人工衛星
人工衛星のコーナー。カーナビやスマホのGPS機能など、じつはお世話になりまくっている人工衛星についての理解が深まる展示エリアです。
光衛星間通信実験衛星「きらり」の実寸大模型を始め、さまざまな人工衛星を展示、解説。無重力空間での姿勢制御のメカニズムなど、興味深い内容になっています。
有人宇宙開発
有人宇宙開発の歴史や現状を知ることができるコーナー。無人なのか有人なのか、とても大きな違いがあるようです。
国際宇宙ステーション(ISS)で活躍している日本の実験棟「きぼう」の1/1(実寸大)模型を展示。中に入ると、係の人が内部のスペックを解説してくれます。
「宇宙服」を着た人が「宇宙遊泳噴射装置」を背負っている様子。SF映画だと、もっと身軽&デザイン性の高い装備でスイスイ移動できちゃうはずなんですけどね。
有人宇宙開発の歴史年表
項目を単純に並べているのではなく、デザインや画像が工夫されていて、とても興味を引く構成になっています。
世界初の宇宙事故死は1967年(昭和42年)4月、地表に激突したソユーズ1号宇宙船(ソ連)。
宇宙探査
現在、小惑星に向かって飛行を続けている「はやぶさ2」の実寸大模型。映画化もされて話題になった「はやぶさ」の後継機です。
火星探査車「キュリオシティ」の実寸大模型も展示しています。
特別企画展(2018年3月24日~31日)
『月への挑戦 アポロ・ルナ展』…ソ連時代のルナ計画で採取された「月の砂」とアメリカのアポロ計画で採取された「月の石」を期間限定で展示!
月の砂(実物!)
アポロ15号が持ち帰った月の石(実物!)
ミュージアムショップ
博物館1階エントランス付近にあるミュージアムショップ。およそ800アイテムもの豊富なグッズが用意されています。
「飛燕」のプラモデル
博物館オリジナルのプラモデル「1/72スケールの飛燕」。2個3個と、まとめ買いしている人もいました。
ペーパークラフト
リアルに飛ばせるヒコーキのコーナー。素材に「紙」や「発泡スチレン」が使われています。年配のお父さんが、ごっそり抱えて買っていきました。親戚のお子さんにあげるんでしょうか。
宇宙食
各種「宇宙食」のコーナーも。いろいろ改良され、そうとう美味しくなっているそうです。
ミュージアムカフェ「空宙博カフェ」
屋外に展示されている機体を眺めながら飲食が楽しめるミュージアムカフェ。
博物館ならではのメニュー
食べて楽しい、飲んで楽しい、SNSで拡散したくなるメニューがいっぱいです。
「宇宙の星空カレー」は、カレールーの表面に星型の何かが浮かんでいますね。何かが何なのかは分かりませんが(にがわらい)。
飛行機のカタチをしたパンが面白いですね。揚げたチキンは「フライド」ではなく、「フライト」になっています。
「ふわふわ雲のソーダゼリー」が気になります。
展望デッキ
赤い外階段で屋上へ
赤い色の外階段を上がっていくと、博物館の屋上に出ることができます。
いざ上がってみると案内看板のたぐいが一つもないため、ほとんどの人がチラッと屋外展示の飛行機を見たあとに「とくに何もないんだ」とガッカリして、すぐに降りてしまいます。
しかし、よくよく遠くを眺めてみると、実は色んなものが見えているんですよ。誰も気づいてないだけで。
屋上から見えるもの
名古屋駅周辺の高層ビル群
南西方向の山の頂上付近にある自衛隊関連施設
日本百名山の一つ「伊吹山」
すいとぴあ江南(展望タワーの「スカイルーム」)
これらの景色に気づいている人は、ボクが見ていた限りでは皆無。簡易なもので構わないので、なんらかの案内板の設置を検討する必要があるかもしれません。
アクセス
博物館の場所
博物館は日本のど真ん中・岐阜県の各務原市にあります。【各務原】の読み方について、市は「かかみがはら」を正式なものとして推奨していますが、JRの駅名の読みは「かがみがはら」ですし、かつて名古屋鉄道の駅名は「かがみはら」でした。ちなみに年配の岐阜ケンミンは「かがみはら」派の人が多いような気がします(名波アマ調べ)。
ケンミンやシミンのあいだで読み方が一つに定まっていない地名は全国的にみても珍しいのではないでしょうか。
所在地…岐阜県各務原市下切町5丁目1番地
電話番号…058-386-8500
ざっくり分かりやすく言うと「航空自衛隊・岐阜基地のすぐ南側」。カーナビ等には古い名称の「かかみがはら航空宇宙科学博物館」が表示されるかもしれません。
クルマ・バイクで
・東海北陸自動車道「岐阜各務原インター」から
国道21号線を東(美濃加茂方面)に向かい、「那加大東町交差点」を右折→3つめの信号「上戸町交差点」を左折→次の信号左折すぐ。
・名古屋市中心部から
国道22号線を北(岐阜市方面)に向かい、一宮市の「両郷町交差点」を右折→「島宮西交差点(Y字路)」を左前方に進み、さらに「東野交差点(Y字路)」も左前方に進み、「村久野富士塚交差点」を左折→木曽川にかかる2つの橋を渡ったあとは案内標識に従ってください。
・名古屋市中心部から(別ルート)
国道41号線を北(犬山市方面)に向かい、大口町の「下小口5丁目交差点(X字路)」を左前方に進み、しばらく道なりに走って木曽川にかかる「愛岐大橋」を渡ったあとは案内標識に従ってください。
博物館の周辺は要所要所に案内標識が立てられています。見逃しに注意。
駐車場
博物館の正面入口付近などに無料の大駐車場を完備(普通乗用車×550台・バス×12台)。
臨時駐車場から無料のシャトルバス
2018年3月24日(土)・3月25日(日)・3月31日(土)の3日間は臨時駐車場が用意され、臨時駐車場と博物館を結ぶシャトルバス(無料)が運行されます。臨時駐車場から博物館へ向かう始発便は9:00発、博物館から駐車場に戻る最終便は18:00発となっています(往路・復路とも30分間隔で運行)。
臨時駐車場の位置
各務原浄化センター(各務原市前渡西町1521)…愛岐大橋の西500m、木曽川の右岸(下流の方向を見て右側)にあります。
電車・バスで
名古屋や岐阜方面から名古屋鉄道(名鉄)で「名鉄・各務原市役所前駅」か「名鉄・三柿野駅(みかきのえき)」まで行き、各駅から博物館までバスを利用するルートが基本になります。
「名鉄岐阜駅」から「各務原市役所前駅」へは名鉄・各務原線の【普通】で所要15~20分、【急行】で所要10分。
※1時間に4本前後のペース
※急行など全ての電車が「各務原市役所前駅」「三柿野駅」に停車します
・名古屋鉄道「各務原市役所前駅」から博物館へのバス
「各務原市役所前駅」バス停から各務原ふれあいバスの《稲羽線》か《川島線》に乗車→「航空宇宙博物館」バス停下車。運賃は子どもから大人まで1回100円(未就学児童は大人1名につき2名まで無料)。
往路(各務原市役所前→博物館・所要15分~30分)
《稲羽線》…【6:30】【9:30】【11:20】【12:40】【14:30】【15:40】
《川島線》…【7:30】【10:15】【13:20】
《稲羽線》…【9:30】【12:40】【15:40】
《川島線》…【7:30】【10:15】【13:20】【16:45】
復路(博物館→各務原市役所前・所要15分~30分)
《稲羽線》…【10:32】【11:49】【13:39】【14:59】【17:02】【18:07】
《川島線》…【12:51】【15:51】
《稲羽線》…【11:49】【14:59】
《川島線》…【12:51】【15:51】
※博物館の開館時間に間に合わない便は除外してあります
・名古屋鉄道「三柿野駅」から博物館へのバス
「三柿野駅」バス停から各務原市ふれあいバスの《稲羽線》に乗車→「航空宇宙博物館」バス停下車。運賃は子どもから大人まで1回100円(未就学児童は大人1名につき2名まで無料)。
往路(三柿野駅→博物館・所要30分)
《稲羽線》…【8:13】【10:00】【11:17】【13:07】【14:27】
《稲羽線》…【8:13】【11:17】【14:27】
復路(博物館→三柿野駅・所要30分)
《稲羽線》…【11:50】【13:10】【15:00】【16:10】【19:20】
《稲羽線》…【13:10】【16:10】
※博物館の開館時間に間に合わない便は除外してあります
JR那加駅から無料の臨時シャトルバス
普段は路線バスが走っていない「JR那加駅(なかえき)」と博物館を結ぶ臨時のシャトルバスが2018年3月24日(土曜)~3月31日(土曜)の期間、毎日運行される予定です。JR那加駅はJR岐阜駅から高山本線の「美濃太田行き」「高山行き」普通列車に乗って2つめの駅になります【JR岐阜駅→JR長森駅→JR那加駅】岐阜駅→那加駅は片道210円。
JR那加駅からの始発便9:00発(30分に1本ペース)
博物館からの最終便18:00発(30分に1本ペース)