誰もが知ってる「日本百名山」や「名水百選」といったメジャーなものから、ちょっとマイナーかな?と思われる「ため池百選」「デザインマンホール100選」に至るまで。日本には一体、どれぐらいの数の「○○百選」が存在しているのでしょうか。
インターネット上に情報が公開されているものを中心に、地道に検索をかけて調べました。
ただし極端にローカルなもの(たとえば「岐阜百名山」)や、ベスト100を選ぶ意義が薄いとボクが判断したもの(たとえば文化庁選定「わたしの旅100選」など)は除外してあります。
数がとても多くなりそうなので、まずは第1弾として「メジャーな○○百選」をまとめてみました。
メジャーな○○百選×7つ
日本100名城
選定者は「公益財団法人・日本城郭協会」
2006年(平成18年)、日本を代表する文化遺産であり地域の歴史的シンボルでもある城郭、城跡を多くの人に知ってもらい、関心を高め、ひいては地域文化の振興につながることを念じ、文部科学省・文化庁の後援を受けて選定されたのが「日本100名城」です。
「日本100名城」の一覧(日本城郭協会の公式サイトより)
▲長野県「松本城」(筆者撮影:2013年)
2021年2月現在、「国宝に指定されているお城(天守)」は日本に5つしかありません。
・松本城(長野県松本市)
・犬山城(愛知県犬山市)
・彦根城(滋賀県彦根市)
・姫路城(兵庫県姫路市)
・松江城(島根県松江市)
ちなみにボク(名波アマ)が個人的に「日本10名城」を選ぶとすれば、こんな感じ
・松本城(長野県)…国宝の貫禄
・上田城(長野県)…vs徳川軍の戦いで2勝0敗
・丸岡城(福井県)…現存12天守の一つ
・犬山城(愛知県)…国宝、天守からの展望がナイス
・岐阜城(岐阜県)…織田信長の居城、天守からの眺めが超絶ナイス
・彦根城(滋賀県)…国宝、ひこにゃん
・二条城(京都府)…大政奉還の舞台、世界遺産
・姫路城(兵庫県)…国宝、世界遺産、デザインが好き
・熊本城(熊本県)…武者返し、くまモン
人によっては、これらのほかに「江戸城」「名古屋城」「大阪城」「松江城」「備中松山城」「丸亀城」「高知城」「松山城」「宇和島城」などをあげるかと思います。
さらに2017年(平成29年)、日本城郭協会により、まったく同じコンセプトで100名城を追加選定した「続日本100名城」が発表されました。これにより、選ばれた名城は合計200。
「続日本100名城」の一覧(日本城郭協会の公式サイトより)
日本百名山
選定者は作家の「深田久弥(ふかだきゅうや・1903-1971)」
日本に存在する有力な山の中から傑出した100座を(短期間で一気に選び)リスト化したもの…と、なんとなく思ってしまいがちですが、実際はニュアンスが少し違っています。
深田が1959年(昭和34年)から1963年(昭和38年)にかけ50回にわたり山岳雑誌「山と高原」において毎回2座を選んで執筆した連載記事を元に、1964年に「日本百名山」(新潮社刊)というタイトルで単行本にまとめたものが登山愛好家の間でベストセラーになり全国に広まった、というのが正解。
「深田久弥自身が一度も登ったことがない山は『百名山』に選ばない」という絶対的な選定基準があったため、「一部の山についてはベスト100としての価値に疑問がある」とする人もいます。
「日本百名山」一覧(一般社団法人「日本百名山協会」の公式サイトより)
▲北アルプス乗鞍岳からの眺め(筆者撮影:2009年)
乗鞍岳は標高3026mで、日本百名山の一つ。雲海の向こう、正面に見えてるのは甲斐駒ヶ岳(百名山)や北岳(百名山)、間ノ岳(百名山)などが連なる南アルプスです。
▲伊吹山の山頂付近(筆者撮影:2007年)
東海道新幹線の関ヶ原付近から見えることでも知られる伊吹山は標高1377mで、日本百名山の一つに選ばれています。「日本百名山」が発表された翌年に9合目(!)まで通じるドライブウェイが開通し、誰でも気軽に山頂に立てる「観光地」になりました。
「日本百名山」といえば特に注釈がない限りは深田の選んだ100座を指すのが一般的ですが、ほかに、中高年でも登りやすい山といった基準で登山家の岩崎元郎が選んだ「新日本百名山」も存在しています。しかし、深田を支持する人の一部からは、岩崎を激しく批判する声もあがっているようです。
気になった方はネットで検索してみてください。
名水百選
選定者は「環境省」(選定当時は環境庁)
昭和60年3月、国民の水質保全への認識を深め、併せて優良な水環境を積極的に保護すること等今後の水質保全行政の進展に資することを目的に、環境庁が全国各地100ヵ所の湧水や河川を「名水百選」として選んだものです。
「名水百選」一覧(環境省の公式サイトより)
しかし、水質を客観的、科学的な観点からガチで分析して日本全体のトップ100を選んだものではないようです。47都道府県の全てから、それぞれ最低1つが選ばれているからです。そういう意味では「各都道府県毎に、それぞれの地域における第1位~第2位クラスの名水がバランスよくリストアップされているもの」と考えたほうが良さそうですね。
名水百選の中で、特にボクが「これはナイスな水・環境だなあ」と思っているのは
・静岡県駿東郡清水町「柿田川湧水群」
・大分県竹田市「竹田湧水群」
3ヶ所とも過去に観光で訪れたことがあるけどデジタル画像を1枚も撮っていないので、またいつか再訪して、どこかで紹介したいなと思います。
さらに2008年(平成20年)には、同じく環境省によって「平成の名水百選」がリストアップされました。もともとの「名水百選」と「平成の名水百選」には重複がないので、合わせると200の名水が選ばれたことになります。
「平成の名水百選」一覧(環境省の公式サイトより)
日本さくら名所100選
選定者は「公益財団法人・日本さくらの会」
平成2年(1990年)に「日本さくらの会」が日本を代表するさくらの名所100箇所を選定し、その保存、育成に努めているものです。
「日本さくら名所100選」一覧(日本さくらの会の公式サイトより)
(筆者撮影:2017年)
▲日本さくら名所100選に選ばれた公園・名所には専用のプレートが掲げられています。
▲山形県鶴岡市の「鶴岡公園」(筆者撮影:2005年)
夜桜が美しいことで知られている鶴岡公園も、もちろん「日本さくら名所100選」の一つです。
▲福島県三春町「三春の滝桜」(筆者撮影:2005年)
これも日本さくら名所100選の一つですが、個人的には”世界さくら名所1選”。世界一の桜の木だと思ってます。
日本の棚田百選
選定者は「農林水産省」
1999年(平成11年)、農林水産省内に設けられた「日本の棚田百選選定委員会」が、各都道府県から推薦のあった棚田について審議した末、134地区の棚田を「日本の棚田百選」として選び、発表したもの。
つまり、正確に言うと「ベスト100」ではなく「ベスト134」ということになります。
「日本の棚田百選」の一覧(一般社団法人「地域環境資源センター」の公式サイトより)
▲山形県朝日町「椹平(くぬぎだいら)の棚田」(筆者撮影:2017年)
写真の椹平は傾斜がゆるやかで、広大な野外フェス会場の観客席みたいな雰囲気の棚田でした。
全国各地にある棚田の中でも、とくに今後、ボクが訪れてみたいと思っているのは
・石川県「白米千枚田(しろよねせんまいだ)」
・三重県「丸山千枚田(まるやませんまいだ)」
・和歌山県「あらぎ島(あらぎじま)」
・長崎県「土谷棚田(どやたなだ)」
など。天気の良い日や、水面がキラリと反射する時間帯を狙っていきたいですね。
小倉百人一首
選定者は「藤原定家(ふじわらのていか)」
13世紀の前半(推定)、公家の藤原定家が100人の歌人の優れた和歌を一首ずつ選んで色紙を作成し、鎌倉幕府の要人が京都の小倉山のふもとに建設した別荘のふすまの装飾品としてその色紙を納品したのが起源。
「小倉百人一首」一覧(個人サイト「綱手かなしも」より)
競技かるたの世界を描いた漫画作品「ちはやふる」がヒットするなど若い世代にも広く知られている小倉百人一首ですが、その中で3句を選んで現代語に訳してみます。
うち出でて見れば白妙の
富士の高嶺に雪は降りつつ
(山部赤人)
…田子の浦(=現在の富士市田子の浦ではなく、かつての静岡市清水区付近の海岸)から望む白い富士山のたたずまいは、それだけでも見事なのに、その頂上付近に、今まさに新たに雪がふっている(かのように見えている)のがナイスすぎる(訳:名波アマ)
惜しからざりし命さへ
長くもがなと思ひけるかな
(藤原義孝)
…あなたに会うためなら惜しくもなんともないと思っていた私の命ですが、こうして実際にあなたと会うことができている今、なるべく長く生きていたいと考えを改めることにしました(訳:名波アマ)
神代もきかず竜田川
からくれなゐに水くくるとは
(在原業平)
…なんでもアリだった神話の時代ですら、なかったんじゃね?竜田川が紅葉の葉っぱで真っ赤に染まるなんてこと(訳:名波アマ)
最後のやつは、イケメン&奔放な性格だったとされる在原業平っぽさを強調してみました。
『もしかしたら本物かもしれない「藤原定家が13世紀に作った色紙」』が何枚か存在していて、美術館などが保有しています。しかし織田信長や豊臣秀吉、徳川家が競うようにコレクションした経緯もあり色紙の価値が高騰。江戸時代以降、ニセモノが多く作られたことから、現状では、その真贋を判定するのが難しいとのことです(→参考文献:国立国会図書館の資料ほか)。そのため、国宝に指定されている色紙は1枚もありません。
日本の道100選
選定者は「国土交通省」(選定当時は建設省)
日本の道100選は1986年(昭和61年)から1987年(昭和62年)にかけ、建設省内に設けられた「道の日選定委員会」により、各都道府県から推薦のあった道路の中から、道路の歴史性・親愛性・美観性・機動性といった審査基準をもとに選び出した104の道路のこと。これも日本の棚田100選と同じく、きっちりベスト100を選び出すんだという強い覚悟は持っていないものになっています。
「日本の道100選」の一覧(Wikipediaより)
▲三重県亀山市付近の旧・東海道(筆者撮影:2014年)
写真は、かつての「関宿(せきじゅく)」。江戸時代から明治時代にかけて建てられた古民家が今も200軒近く残り、日本の道100選の一つに選ばれている区間です。
現在、国土交通省の公式サイト内を探してみても、この「日本の道100選」に関する情報は得られません。建設省時代に催された”古いイベント”であるせいか、あまり真剣には引き継がれていないようです。
第2弾以降の「○○百選」予告
現時点でリストアップしている「○○百選」は以下の通り。もしかしたら今後、少し増えるかもしれません。
地形・地質の○○百選
日本の地質百選
日本百名峠
日本百名谷
日本の渚百選
風景・環境の○○百選
かおり風景百選
日本の音風景100選
日本の夕陽百選
日本の秘境100選
日本百景
新日本百景
平成百景
日本の白砂青松100選
農村景観百選
都市景観100選
夜景百選
河川・湖沼・ダムの○○百選
日本の滝百選
ため池百選
疎水百選
ダム湖百選
道路・橋・公園の○○百選
歴史の道百選
日本の都市公園100選
日本百名橋
デザインマンホール100選
日本絶景ロード百選
歴史的建造物の○○百選
近代水道百選
日本の歴史公園100選
ヘリテージング100選
残しておきたい駅舎建築100選
温泉・観光スポットの○○百選
新日本観光地百選
新日本旅行地100選
新日本観光地100選
快水浴場百選
にっぽんの温泉100選
日本百名湯
プロが選ぶ日本のホテル旅館100選
その他の○○百選
公共建築百選
日本の歌百選
農山漁村の郷土料理百選
…などなどなど。